新しいコロナワクチン「コスタイベ」

 2024年10月よりコロナワクチンの定期接種が始まりました。今回の接種では、従来のファイザー・モデルナ・武田に加えて、第一三共・Meiji Seikaファルマの2社のワクチンが加わり、5種類のワクチンがあります。今回は、新しいmRNAワクチンであるMeiji Seikaファルマ「コスタイベ」をご紹介します。

新型mRNAワクチン・レプリコンワクチン

 mRNAワクチンは、ウイルスを構成するたんぱく質(抗原たんぱく質)の一部の遺伝情報(mRNA)を注射することで、体内でmRNAから抗原たんぱく質が作られ、それに対して体が抗体を作る仕組みになっています。

 新しいmRNAワクチンであるレプリコンワクチンは、抗原たんぱく質のmRNAに加えて、mRNAを複製する「レプリカーゼ」の遺伝情報を含みます。体内でmRNAを複製して増殖させるため、従来のmRNAワクチンよりも多くの抗原たんぱく質を生成し、引き続き多くの抗体を産生させます。つまり、従来のmRNAワクチンより、少ない量のワクチンで、より長い期間、多くの抗体を作ることができます。ちなみに、mRNAの増殖は永久に続くわけではなく、mRNAの増加は7~8日目まで、抗原たんぱく質の増加は15日目までとされています。

 レプリコンワクチンの仕組みは感染症の予防だけではなく、将来は癌や免疫疾患の治療にも応用されることが期待されています。

ワクチンの安全性・副作用

 レプリコンワクチンの安全性については、2021年よりベトナムで、2022年より国内で、2~3年の時間をかけて確認が行われてきました。

 代表的な副作用は「痛み、発熱、倦怠感、筋肉痛」などで、従来のワクチンと大きな差はありまえせんでした。また、「ワクチンを打った人・約8,000人」と「ワクチンを打たなかった人・約8,000人」を比較したところ、死亡者数は「打った人」5名、「打たなかった人」16名で、ワクチンを打った人で死亡者数が増えることはありませんでした。なお、前者5名のうち1名、後者16名のうち9名は新型コロナ感染症による死亡でした。

Safety, immunogenicity and efficacy of the self-amplifying mRNA ARCT-154 COVID-19 vaccine: pooled phase 1, 2, 3a and 3b randomized, controlled trials

Q&A

レプリコンワクチンを打つと体内でコロナウイルスが増殖するの?

 レプリコンワクチンに限らず、mRNAワクチンに含まれる遺伝子情報は、ウイルスのたんぱく質の一部です。体内で感染力のあるウイルスが生成されることはありません。

レプリコンワクチンの長期的な安全性は?

 およそ3年間かけて効果と安全性が確認されてきましたが、長期的な副作用は発売直後のためわかりません。今後もデータを蓄積して安全性を確認していく必要があります。

レプリコンワクチンは日本でしか認可されていないの?

 レプリコンワクチンは世界に先駆けて日本で承認されました。製薬会社・厚生労働省等、各所の尽力により、最新のワクチンが世界最速で導入されたのは喜ばしいことだと思います。承認の根拠として、国内外の研究で有効性と安全性が確認されています。欧州では、CSL Seqirus社により既に欧州医薬品庁に承認申請が出され、承認の最終段階となっております(2024年10月現在)。また、米国をはじめとした他国でも臨床試験が進んでいます。

レプリコンワクチンで「シェディング」するの?

 「シェディング」とは、ワクチンによって生成されたウイルスのたんぱく質が全身に分布し、それが呼吸や皮膚接触で他人にうつるのではないかという仮説ですが、これを科学的に証明した研究は現時点ではありません。

 そもそも、先述の通り、mRNAワクチンが生成する抗原たんぱく質はウイルスの一部にすぎず、感染性のあるウイルスは生成しません。

 一方、ワクチン接種者とワクチン非接種者を比べると、コロナ感染症にかかった後に何日目まで体がコロナウイルスを排出するか調べたところ、ワクチン接種者は6日、ワクチン非接種者は7.5日でした。ワクチンを接種した方がウイルスは排出しない、ということが証明された研究です。 

Infectious viral shedding of SARS-CoV-2 Delta following vaccination: A longitudinal cohort study

終わりに

 今回は、新しいmRNAウイルスワクチン(レプリコンワクチン)、「コスタイベ」についてご紹介しました。皆様が科学的に正確な情報を確認した上で、メリットとデメリットを比較し、納得して接種する・しないを選択していただくことを願っております。

Meiji Seikaファルマ:次世代mRNAワクチン情報サイト